2015年09月25日

錯覚の科学

「普通の人は、脳の潜在能力を10%しか使っていない」ってよく言われます。
私もそうなのだろうと思っていたのですが、この説って実は根拠が定かでない信仰でしかないと分かって驚きました。

この説の出所を探ろうとした心理学者がいます。サイオン・フレイザー大学のバリー・バイヤーステインという先生は「10パーセント神話の起源を掘りだそうとした私は正直言って疲れ果てた・・・10パーセント神話の種を最初にばらまいた人間が、昔ながらの、自己啓発産業群団のサクラや客引きたちであることはほぼ間違いない」と書いているそうです。

私たちが脳を10パーセントしか使ってないとしたら、使い方を知らないだけで、90パーセントの能力が眠っていることになりますが、これは、私たちの「可能性の錯覚」でしかないようです。
この説には問題がいくつもある。まず、人の「脳の潜在能力」を計測する方法も、その能力のうち個人がどれくらい使っているかを計測する方法も知られていません。また、脳組織というのは、長い間働いていないと死んでしまうはずです。さらに、人類の進化を考えてみても、9割も使っていない部分を持つ大きな脳を出産の危険にさらされながら維持するはずがない、もし人が脳の一部しか使っていなかったとしたら、自然選択によって、脳はとっく昔に小さくなっていただろうというのです。

よく脳の活動を写した写真がメディアで紹介される時、脳の殆どは暗くて、ほんの一部だけ明るい色がついています。でも、その色のついた部分というのは、脳が活動している部分を示すのではなく、状況や個人差に応じて他より活発になる部分を示しているだけ。脳全体はつねに基本的な活動レベルでは「オン」の状態なのだそうです。

これは『錯覚の科学』という本に書かれていたことですが、この本を読むと、私たちがいかに日常的に錯覚の影響を受けて生活しているかが分かります。
当然こうでしょ、と思うことも、じっくり眺めてみると違っていることがある。
面白い本です。
posted by 幸 at 14:58 | Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2015年08月19日

心をはなれて人はよみがえる

夜明け前の空
今朝の空.jpg

花を見ている。
見ているのは私の「自我」である。
花は私によって見られている。
じっと花を見ている私と見られている花を見ているのは、「大我」である。
こうして、私は花を見ているし、私は花に見られている。
花を通して、私は私を見ている。

青い空を見上げる。
私が空を見ている。
すーっと吸い込まれていくような青い空。
私と空の間には何もない。
青い空につつまれている私。
私をつつんでいる青い空。
二つは同じものである。

 『心をはなれて人はよみがえる』(高橋和巳)より

私が敬愛する精神科医の高橋先生。やはり深いです。
数々のカウンセリングの現場で、悩んでいる人が葛藤を乗り越え、悩みを超越する瞬間、共通して起こる「心をはなれる」現象。実は、どんな人でも起こりうることだと仰っています。
カウンセリング理論にはこの「特別な時間の介在」については殆ど書かれていないそうです。
posted by 幸 at 15:44 | Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2014年10月07日

「セラピューティック・タッチ」

傾聴マスターコースの傾聴研究で、『セラピューティック・タッチ』という本を借りてきて読みました。


セラピューティック・タッチというのは、哲学博士で正看護師でもあるドロレス・クリーガーが、手で癒すという古代から行われてきた癒しの技法に科学的な研究を取り入れて臨床に応用してきた代替療法で、アメリカの医療関係者たち、特に現場の看護師たちに受け入れられ、広がっているそうです。

いわゆる手をかざして行うヒーリング。
特別な人だけでなく、誰でもできる、と書かれていて、その方法が詳しく説明されていました。
読んでみると、セラピューティック・タッチは、人と人との深い内面での体験であることが分かります。
相手と向かい合う傾聴の場にも通じる深〜くて興味深い内容でした。

セラピューティック・タッチで、最初にする「センタリング」は、とても重要です。

「センタリング」とは、身体的・心理的に、自己の中心点をつかんで維持すること、とあります。
これは「自分につながっている」という意識で、自分の内部に中心点が定まったと感じられるような静かな境地ともいえます。
瞑想的ですね。

中心感覚を維持していると、執着や偏見からはなれて、生起するできごとをそのまま眺めることができる、と著者は述べています。これは、傾聴する時にも必要な姿勢だと思います。

「センタリング」の簡単なやり方がでていましたので参考までに。
以下のような手順です。

インスタント・センタリング

1.楽な姿勢で座る。ただし、最後まで正しい姿勢をたもつこと。

2.リラックスする。そのために、緊張している部位を探ってそこをゆるめる。たとえば、首か肩の筋肉に緊張があれば、一度両肩をあげてわざと強く緊張させ、吐く息と一緒に肩を下げて緊張をゆるめる。

3.ゆっくりと深く息を吸う。

4.ゆっくりと息を吐く。

5.また息を吸う。そう、その状態!今味わっている呼気と吸気の中間の状態がセンタリングをしているときの状態と同じ。センタリングの経験は、この調和、均衡、静穏の状態に特徴がある。

センタリングの感覚を覚えていると、色んなところで役立ちそうな気がします。

セラピューティック・タッチで大事なことは、「慈しみのこころ」。
傾聴というのも、ただ話を聞く、ということにとどまらず、自分自身への理解を深め、「慈しみのこころ」で他者と繋がる、深い内面での体験になれたらいいと思います。
posted by 幸 at 19:33 | Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2014年06月21日

「今」という境地に達する

昨日ご紹介した本「私は私になっていく」の中から、もう少し抜粋。

自己発見の旅の末、真の自己に気づいたクリスティーンさんが、「今」という境地を語っています。

私の魂としての自己は、過去も未来もない「今」という時に存在している。
仏教の「刹那」という言葉は、このように時間の枠から離れた存在感覚を捉えたものだ。
万物が「今」という場所に存在することを理解すれば、時間の外に在られる神が何であるかをより深く知ることができる。

(中略)

私の真の自己は、花のつぼみのごとく、私であろうとするところのあらゆる潜在的可能性を蓄えている。
その私とは、この一時的な地上の存在に限られるものではなく、永遠なる次元における私である。
このようにずっと絶え間なく、永遠に、「今」という時に在り続けることは、新しい生き方だ。
生きる極意と言ってもいいかもしれない。
posted by 幸 at 17:50 | Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2014年06月20日

私は私になっていく

「私は誰になっていくの?」(5/17記事 5/21記事)の著者、認知症患者であるクリスティーンの2作目「私は私になっていく 痴呆とダンスを」を読んでいます。


彼女がアイデンティティの危機を乗り越え、認知症という病気を受け入れながら、本当の自分を見つけ、「新しい生き方」を見出していく過程が述べられていて感動的です。

自分がなくなってしまう恐怖の中で、「自分であること」の意味について考え続けた彼女は、病気によって自分が失っていくものと、自分にずっと残るものがあることに気づきます。
失っていくものは、自分の表層部分である認知と、その下にある感情の層。
残るものが、存在の中心にある「真の自己」であり、この魂の核によって、人生の意味を引き出すことができる。
認知症によって認知と感情の層が壊れ、本当の自分になっていくのだということを彼女は理解しました。

彼女はその変化についてこのように述べています。

それは、最初に診断されて、痴呆の旅が始まった時とは全く違うものの考え方だ。
私はもはや外側の表層ではない。外側の仮面ではない。
かつてそうであったように、三人の娘を抱えて働きながら、家族の心配ごと、家庭生活、仕事の課題を抱えた母親ではない。
その代わりに私の内なる人がどんどん姿を現してきている。
この人格は以前にも存在していたのだが、達成された認知とコントロールされた感情の仮面に隠れて、目立たずにいた。
今、私は、より感情的になったと思う。
病気になる前の私はいつも静かで、自分と他人をコントロールしていた。他の人とは、その人の気持ちのレベルで本当につながったことが一度もなかった。職務指向型の人間で、自分の感情を出すのは娘に対してだけだった。
今、私の感情はもっと解放され、他の人の気持ちを気にかけるようになった。
今の私は、その人の外側の仮面だけでなく、その人全体とつながろうとする。


「真の自己」を発見したことで、彼女は全く自由で新しいものの見方をし、新しい生き方をしていきます。

それは、認知症を生き抜く知恵、などという特別なものではなく、私たちみんなに普遍的な真実として心に響きました。

自分を見つめなおし、真の自己に気づくこと、表層の自分ではなく、もっと深い魂の次元で人とつながること。

彼女の心の軌跡は、示唆とメッセージに溢れています。
posted by 幸 at 18:55 | Comment(0) | 書籍など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。